原状回復 賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書 特約の内容
これから賃貸契約を行うものです。
先日契約書を不動産屋から受け取り内容確認したところ以下のような記載がありました。
国土交通省の原状回復のガイドラインから、
特に重量物の凹みや電気ヤケ等は経過損耗にあたるべき内容と認識しておりますがこのような特約は契約時点で変更が可能なのでしょうか?
以下記載内容
退去時における住宅の損等の復旧について(連絡先及び特約事項を含む)
(前略)
5. 次にあげる事例は、「経年劣化」・「自然損耗』になりませんので、「借主の費用負担」となります。
(中略)
重量物の設置による量・床材等の四み
(中略)
壁クロスの電気焼け(冷蔵庫・テレビ等の背面)
(中略)
8.退去時のエアコンクリーニング費用は、利用の有無にかかわらず借主の負担とし
★弊社のアンサー
相談者様
「特約は契約時点で変更が可能なのでしょうか?」
→(特約も含め)契約の内容は自由に決めることができるのが原則です。ですので、変更が可能か不可能かだけで言えば、「可能です」
一般的に賃貸借契約で、テナントの場合は「賃料」や「敷金」、「業種」等、おおざっぱな条件を確認の上、申し込みをし、実際の細かいルール(看板の位置や解約の際の原状回復の程度など)はその後、お互いに条件面を詰め、決まった段階で書面(いわゆる「契約書」)にし、契約を結びます。
一方、一般的な借家の賃貸契約の場合、賃貸人(もしくは管理会社)が募集の条件を提示し、その条件に合意するものが「申込」を行う形が多く、場合によっては申し込み前に礼金や賃料等の金銭的条件の交渉が入りますが、その他の条件に関してはあまり交渉をすることがありません。
これはテナントの場合は、業種により、かなり差異があり、実質的に均一の条件やルールでの募集をかけることが不可能である一方、借家の場合は、概ね、使用用途に違いはなく、また、賃貸人が自由に入居ルールを定め、入居者選択、希望の居住環境や運営維持を実現する目的もあるものと思われます。
このようなことから、例えば、ペットの飼育、楽器の演奏、喫煙の不可、女性限定など、大枠的な問題に関して、(特約も含め)契約内容の変更の交渉は難しいと思われるものの、軽微な内容であれば、交渉の余地はありうるのではないか、と思います。
ただし、実務的に言えば、賃貸の書類は郵送でやり取りすることが多く、また、契約の始期までの時間的な猶予もあるので、実際に賃借人の希望を聞いてもらえるかどうかまでは、管理会社(賃貸人)により対応は異なると思われますし、そもそも条件面での交渉を(特に理由もなく方針として)一切、してもらえない場合もあると思います。
相談者様はガイドラインを見て、ガイドラインと比べ、特約の内容がより相談者様の負担が増える内容であることを気にされておられるようですね。
私も宅建業者なので、ガイドラインに関して、何度か国土交通省に確認の電話をしたことがあります。こちらの相談でもある「ガイドラインを理由に、クロスは6年経てば、原状回復しなくてもよいと思っている消費者が多いのですが、本当にそれで正しいのですか?」といった確認もしました。結局、国土交通省としては、「あくまでもガイドラインはガイドライン(=法律ではない)なので必ずしもそれに従う必要はない」というスタンスです。
ですので、ガイドラインを理由に交渉をしても、相手方に対して、法律のような主張ができるかと言えば、実際、難しいことも多いのではないかと思います。
個人的にはこのガイドラインで定められている減価償却に基づいた原状回復は明らかに一般的な感覚からすれば、常軌を逸脱した話だと思います。というのも、クロスは6年で価値が1円という指針を出していますが、減価償却的に言えば、新車も6年(軽は4年)、レンタカーは4年で1円の価値になるようです。当たり前ですが、一般的に車を全損されて、減価償却を理由に6年で1円で納得できるとは思えません。ドア(一部)のへこみなら、さらに価値は少ないことになります。このガイドライン通りなら、レンタカー店や成人の日の着付けのレンタルのお店は即廃業レベルかと思われます。
法律もなく賃貸住宅の損失にのみ減価償却を用いるというのは、賃貸人が納得しにくいと思います。
実際、相談内容に書かれている3点(凹み、電気やけ、クリーニング)だけが問題なら、少なくとも最初の2つはさほど難しい話ではないかと思います。
凹みに関しては家具を置く際に重量が分散するように板やじゅうたんを十分に下に敷くことでかなり防止できます。クロスも最近は賃貸用のクロスの上から貼れるものもあるようですし、それでほぼ電気やけは解決するのではないでしょうか。
それでもやはり特約に納得できないのなら、契約をしない、というのも1つの選択肢かと思います。多くの場合、特約で書かれていなくても請求されることもあり、そういったトラブルも多く、原状回復に関して、絶対的な法律がないので、確実な方法はなく、あるとすれば「損傷しない」に限ると思います。
賃貸人も多くの場合、多額のローンを組み、物件を所有しています。また、物件に対しての愛着や強いこだわりもあり、募集条件を決めていることもあります。
新築でたてた家がボロボロになれば悲しくなるのはみな同じで、原状回復も賃借人が何らかの予防処置や対応をしていればしなくてすむ場合も多いのではないかと思います。
法律やガイドライン、契約などルールはありますが、自分の大切な持ち物と同じ気持ちで入居すれば、原状回復の費用もあまり心配しなくてすむかもしれませんね。