申し込み後のキャンセル
賃貸マンションのキャンセルのご連絡をしました。
賃貸契約書に署名捺印をしていない、重要事項説明書の説明を受けていない段階です。ただし保証人のサインはあります。
すると仲介業者から下記のように言われました
・契約書を作成しているからキャンセルできない
・同意の上で進めていることについてはどう考えるのか?
・管理会社からもキャンセルできないと言われている
同意についてはいつの段階のことか分からないのですが少なくとも契約をします。とは言ってません。
キャンセルは不可能なのでしょうか?
申し込み後のキャンセルは非常に多いトラブルの一つです。民法522条には契約に関して、次のように規定されています。
「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。」(1項)
「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。」(2項)
申し込み後のキャンセルの取り扱いについては、仲介業者も四苦八苦するところです。
一般的な業務で言えば、申し込み前には賃料や入居条件など物件の様々な条件の書かれた資料をお客様(賃借人)にお渡しし、内覧の上、お申込み頂いているのではないかと思います。また、申し込み後のキャンセルについても大手管理会社の物件には「承諾後のキャンセルは賃料一か月分が必要」等、注意書きがわざわざ書かれているものも多いです。
しかしながら、多くの方に「契約書に記名捺印」が「契約の成立」だと認識されていて、自己理由でキャンセルしたいという賃借人と、契約の成立を理由にキャンセルできないという賃貸人との意見が対立し、トラブルになるケースが多々あります。
相談者様が書かれておられる重要事項説明や契約書に関しては、宅建業法で「仲介業者」に課された義務であり、そもそもの契約の当事者である賃貸人と賃借人との契約には上記の通り、民法上、書面等は必要ありません。それ故、業者の義務(宅建業法)が契約に直接どういった影響を及ぼしているかは不明です。
仲介業者が言っている「合意」というのは、資料等で提示されている物件の条件に対して、合意の上で申し込んでいる、という意味かと思われます。そして、申し込みに対して賃貸人が承諾をした段階で、民法上、契約が成立したと判断され得る可能性があり、おそらくは管理会社はそう主張しているのだと思われます。最も、今回のように意見が対立し、決着しない場合は、最終的には司法の判断ということになるかと思われますが現実的ではありません。
日々の買い物も売買契約であって、契約をします、と言わなくても法的には双方の合意があれば契約は成立します。今回、相談者様のキャンセルの理由はわかりませんが、相手方の主張も認識していただいた上で、賃貸人側と話し合ってみてはいかがでしょうか。現実的には相談者様がキャンセルを主張すれば賃貸人はどうしようもないようには思いますが、賃貸人も部屋止め等、相談者様からの申し込みに応えてくれていたわけなので、遺恨を残さず、終わった方が今後のためにもいいのではないかと思います。